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2009年5月 先月読んだ本から 

お染風(おそめかぜ)。
明治23年から24年にかけて流行ったインフルエンザを、流行当初“お染風”と当時の日本の人々は呼んでいたそうです。

お染とはすなわち、文楽や歌舞伎の世界だけでなく、いまではどなたでも御存知であろう“新版歌祭文”(=“お染久松”)で破局を迎えるカップルの、あのお染のことです。
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折りしも先月、海の向うで、どうやら新型インフルエンザが流行りだしたらしいという報道がされ始めた時に読んでいた、岡本綺堂随筆集(千葉俊二氏編 岩波文庫)に、明治のインフルエンザのお話が書かれていました。
明治23年のインフルエンザは、街のうわさでは、仏蘭西の船から横浜に輸入されたものだと言われていたそうです。
そして明治の人々が、インフルエンザと言う名称が広く浸透する前に“お染風”と呼んでいたのは、江戸時代に流行した同じような“流行り風邪”に、江戸の人々が“お染風”と名付けていたからだとか。
『お染という名を与えた昔の人の料見は、恐らく恋風というような意味で、お染が久松に惚れたように、すぐに感染するという謎であるらしく思われた』(上記岡本綺堂随筆集P.71より引用-元は、「五色筆」“二階から”の中の“お染風”より)
面白いのはその対処法です。
お染に取り憑かれるのは久松だから、とかいうことで、門口に“久松留守”とか、あるいは“お染御免”などと書いた貼り札をすると良いという迷信が、まことしやかに流行したそうです。
それから120年弱。
“久松留守”と本気でお玄関に貼る方は、まさかもういないでしょう。
けれど、私たちがその頃の方たちと比べて果たして進歩したのか、しないのか。
それは結果をご覧じろ、といったところでしょうか。
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折りしも今日は、端午の節句
故事に習い、とりあえず菖蒲湯で無病息災を願うことにいたしましょう。







usakoの感想簡単に>そうそう、肝心のこの御本のこと。
江戸の香りが少しずつ消えていく明治から大正にかけての東京の様子が、綺堂の歯切れの良い筆調で楽しめます。
歌舞伎好きの方必読の御本です。

by oomimi_usako | 2009-05-05 10:00 | 読書 | Comments(4)
Commented by suzu-kinako at 2009-05-05 22:13
usakoさんはGWは何処へもお出かけにならなかったのですか?
何やら世の中インフルエンザで賑わっていましね。インフルエンザは横浜に輸入されたんですね。
usakoさんて何でも良くご存知ですね。
Commented by coed at 2009-05-05 23:46
大変お勉強になりました!
江戸人は、なんて素敵!!!
タイムマシーンに乗れるなら、ぜひ覗いみたい時代ですよねぇ。
そして、覗いた私の目の前に、usakoさまがほほえんでいらっしゃる絵が、浮かんできました。
Commented by oomimi_usako at 2009-05-06 10:26
☆きなこの母さま、はい、一日だけデパートへ出かけ、あとは蟄居。
お家の中でウロウロゴソゴソ。
その様子は、追ってちょっとブログにも書こうかと思っております。
まだまだ知らないことたくさんありまちゅ~。(と、急にお子ちゃまのふり)
なので皆様のブログを拝見したり、御本を読んだり、いろいろな方のお話を聞いたりしながらいつも“へ~っ”“ほ~っ”と学んでおります。
今は、その学んだことを記憶出来ずに悩む日々!
Commented by oomimi_usako at 2009-05-06 10:26
☆coedさまぁ~!それでは私は、120歳超えの大オババぢゃないですかっ(-"-;)
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