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歌舞伎座 柿葺落五月大歌舞伎 第三部

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三月の開場式の頃よりも、
四月の公演の時よりも、
今月の場内は、ずっと落ち着きを取り戻していました。
以前と違うのは、お越しの方の殆どが、きちんと身を整えてお出ましであること。
まだ学校帰りに、セーラー服姿で観劇に出かけていた頃が、ちょうどこのようで、
ご年配の方々の素敵な装いを拝見出来るのも、
歌舞伎観劇のお楽しみの一つだったことを、ふと、思い出しました。

今回は、花道すぐ脇のお席での観劇。
花道を行き来する役者さん方の息遣いや、翻るお袖から届く風を、
間近く感じられる場所なので、とても好きなお席です。
出来たての花道から、ヒノキの良い香りがふんわりと立ち上っていて、
書割の鎌倉八幡宮の杜を見ながら、木挽町で森林浴をしたような気持ちになりました。
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さて、ここからは、御存知(?)usakoの観劇記録。
長文、平にご容赦ください。

舞台の方は、まず、一幕目が、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)鶴岡八幡社頭の場。通称“石切梶原”とも呼ばれているお芝居です。
記念の興行ゆえ、役者さんはベテランが揃いました。
途中、“三浦大助(みうらのおおすけ)を頼って頼朝が逃げた”ということを知らせる書状が届く場面があるのですが、それを持ってきて帰るだけという奴役さえ、中村錦之助丈が御つとめです。
そうそう、実はこの三浦大助(舞台には全く登場しません)こそ、この石切梶原のお話の含まれた大元の作品の主人公です。
文耕堂によって書かれた享保15年竹本座初演の“三浦大助紅梅たづな”(たづなの漢字は、へん=革、つくり=勺でPC表記不可)は、2012年大河ドラマで取り上げられたあの源義朝から頼朝にかけての時代の、強くなる前の(?)源氏と関東の豪族方のあれこれをドラマ化したもの。
しかし現在は、その三段目“星合寺の場”だけが、場面を鶴岡八幡宮に変えて“梶原平三誉石切”として残っているだけなのです。
国立劇場での復活上演を、待ちたいと思っています。

舞台上では、中村芝雀丈の梢が、なんとも可愛らしい。
ピカイチの梢をなさった雀右衛門丈と仕草があれこれそっくりで、現代のファンだけでなく、往年のファンをも眦を下げられるようでしょう。

中村吉右衛門丈の梶原平三は、絶品。
爽やかで、華があって、そして口跡も流れる水のごとく。
二つ胴の試し切りの瞬間に、はらはら散り落ちる紅梅の花びらを受けての立ち姿など、
本当に絵になるお姿。
見ているものを良い気分にさせてくれる、そんなお芝居が楽しめました。

また、手水石を切ったあと、大向こうさんの聞かせどころ。
「剣も剣」
「切り手も切り手」
そして続けて・・・「役者も役者!」というお決まりの掛け声。
この日は、ちょっとワンテンポ遅れて小さくではありましたが、大向こうさんお疲れ様です。
これを聞いて、石切は満点になります。
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さて、二幕目は、京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)道行より鐘入りまで
坂東玉三郎さまと、尾上菊之助丈のお二人の舞い。
拝見するのは、これで何度目かになりますが、いつ拝見しても、ただただうっとりの夢の世界が楽しめます。

たっぷりと艶やかで、臈長けた玉三郎さまと、初々しく可愛らしい菊之助丈。
どちらも素敵ですが、印象の違いは、まず立ち姿にあります。
玉三郎さまはS字曲線で、菊之助丈はI字直線。
また、表情の変化が、玉三郎さまのほうが顕著です。
中でも、玉さまの“恋の手習い”は絶品。
お二人の御歳の差を考えれば、玉三郎さまのあの身のこなしは驚くべきものです。
はじめのうちは、おトト(魚)の目にならないと見られないわ~と心配をしましたが、
結局気付くと、玉さまを追っている・・・そんな観劇となりました、うふっ。

そうそう、
“聞いたか坊主”さんたちは、珍しく(?)お若い方が揃いました。
若くて、やる気があって(!)キビキビしているのがとても良かった。
やっぱり小坊主さんは、若くなくちゃね~。
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ということで、長い長い観劇記録にお付き合いくださいまして
ありがとうございました。


おまけ usakoのぼやき>
それにしても、新しい歌舞伎座の音響は、驚くほど良くなりました。
吉右衛門丈の良く通るお声も、更に朗々と響きます。
それと共に、ツケの音も聞こえすぎる位大きい・・・と申しますか、音に角があるのが、ちょっと気になります。
先月は、二階最前列上手よりだったので、耳に痛いのは場所のせいかと思ったのですが
今月一階でも同じようでした。
威勢が良いのは良いことですが、丸みのある大きな音がいいなあと思います。
お気になる方はおいでになるでしょうや・・・
by oomimi_usako | 2013-05-23 15:16 | 歌舞伎やお芝居見物 | Comments(6)
Commented by mituamikko109 at 2013-05-23 22:32
やはり、着物の方が多いのかな?
歌舞伎は、よくわからないと言うより見たことがないので、一生に一度くらい南座でも行ってこよう。
TVで、坂東玉三郎さまと、尾上菊之助丈のおふたりの練習風景を見ましたが、
坂東玉三郎さんは、やはり芸に厳しい方です。
勘三郎さんや先輩方が相次いで亡くなり、これからの歌舞伎を背負っていかれるのでしょうね。
Commented by doremi730 at 2013-05-24 03:35
先週の土曜の2部に行ってました。
お庭を記事にしようと思ったのですが、写真が上手くとれてなくて、、
瓦がきれいでしたね
Commented by june_h at 2013-05-24 12:07
コメント&TBありがとうございます!
『梶原平三誉石切』は、なかなか通しでは上演されなさそうですね。
石切の場面などが派手で、この部分だけ残ったんですかね。

『道成寺』も、何度もご覧になっていらっしゃるから、usakoさまの記事は勉強になります。
一度、個人授業を受けさせていただきたいです(^^)
Commented by oomimi_usako at 2013-05-24 16:15
☆mikkoさま、お着物の方はちらほらです。
お着物率は、以前見に行った名古屋御園座の歌舞伎公演の方が断然多かったと記憶しています。
私も、チャチャッと着られるように練習しなくちゃ!
玉三郎さんは、mikkoさんおっしゃるとおり、本当に芸の道に生きていらっしゃいますよね。
ただ綺麗なだけでなく、舞台に立たれるプロ意識が、私はとても好きです。
Commented by oomimi_usako at 2013-05-24 16:17
☆doremiさまは、二部ご観劇でしたか。
全部見ても良いけれど、選び抜いて見るのもこれまた楽しいですよね。二部はいかがでしたか?
空中庭園、まだ行っていません(^^;)
資料室もお庭も、おいおいゆっくり行こうと思っています♪
Commented by oomimi_usako at 2013-05-24 16:24
☆juneさまが、通しでご覧になりたいとお書きだったので、種明かし(??)をいたしました。
でも、私も絶対見てみたいと思っています。
でもどちらの幕も、とってもとっても良かったですよね♪♪
お隣が男の方でしたので、黙っていましたが、お話しやすそうな女性の方だったら、“よかったですねー!”と話しかけてしまいそうでしたよ。
私の記事、そうおっしゃっていただくと一生懸命書く甲斐がございます、ありがとうございます。
完全にミーハー目線で、独断と偏見に満ちているようで宜しければ(^^)vおほほ。
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