歌舞伎座 二月大歌舞伎 昼の部

一幕目。
吉例寿曽我。
まるで、今月が初芝居という感もある一幕目は、
紅白の梅の吊りものの可愛い曽我物です。
そもそも、江戸時代から、曽我兄弟に因んだ演目は、
お正月のものという決まりがあります。
そのお芝居の中に必ず存在する、曽我兄弟と工藤祐経
(くどうすけつね)が対面する場面が、おめでたい儀式としての
役割を持っていたことで、お正月狂言として定着してきた由来が
あるのです。
それがねえ、なぜに二月?

どうしてこうなっているのかよくわかりませんが、
“決まりごとのある清々しさ”が、やがて人を魅了するということに、
早く気付いて欲しいものだと思います。
歌舞伎をもっと広めたい、もっと多くの人に見てほしい…
という思いがあるのは、当然ですが、ただ間口を広げる、
敷居を低くするなどなど、その場凌ぎの浅はかな趣向では、
人の心はつかめませんものね。

始めは、鎌倉鶴ケ岡八幡宮の石段の前でのお芝居。
この場面は、“曽我の石段”と呼ばれていて、
舞台演出上、面白い仕掛けが楽しめます。

闘いの最中、月が雲に隠れた(という設定)真っ暗闇で、
相手が“見えない”ことを前提に立ち回る“だんまり”という趣向が、
まずひとつ。

八幡宮の石段が、役者さんたちを乗せたまま、
90度後ろに倒れてゆき、代わって、下から、
富士山の書割が出てきて、場面は大磯曲輪外の場に変わっていく、
“がんどう返し”という舞台転換方法など。

その後、舞台では、
“いずくもおなじ、千代の春~~”と謡われますが、
同じ春は、どこにも、そして二度とないことを、この日のご見物の皆様は、
どなたも御存知でした。
坂東三津五郎丈の御葬儀当日。
舞台上で、御子息の坂東巳之助丈には、
“おめでとうございます”と声高に言う台詞がありました。
この演目の清々しさと華やかさが、その凛とした大きなお声と重なって、
却って悲しさを、より一層大きくする、胸の詰まるひと幕となりました。
f0039281_1146593.jpg

二幕目は、彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)。
“毛谷村(けやむら)”と呼ばれるお芝居です。
舞台上手の白い花の咲く椿の木や、下手の紅梅白梅に、季節感が感じられます。
毛谷村六郎を尾上菊五郎丈。
だんだんご体型が、お父様の故梅幸丈にそっくりになって来られました。
(大変大変失礼ながら、樽のようなのです~)どうか、お身体大切になさって、
ながくお芝居を見せてくださいと、願わずにはいられません。
女だてらの剣豪お園は、中村時蔵丈。
くすっと笑える場面もあるこの幕。
ひと幕目とは、がらりと変わって、ベテランの揃う幕で、
落ち着いた気持ちで観ることができました。
f0039281_11463978.jpg

三幕目は、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)、“関の扉(せきのと)”と、
呼ばれている舞踊劇です。
今回の観劇は、ここにご出演の尾上菊之助丈を楽しみにしていました。
小野小町姫、傾城墨染、小町桜の精、を演じています。
定式幕があき、舞台を覆う浅黄幕が切って落とされると、そこに
雪に埋もれる逢坂の関と、満開の小町桜が枝をひろげていて、
お話はそこから始まります。
花道を登場する菊之助丈。
可愛い可愛い小町姫役。
赤いお着物に、銀のキラキラ光る簪がようお似合い。
でも、だが、しかし!
あと3,40年経つと、やはりお父様菊五郎丈のような体型に、
なってしまわれるのでしょうか…ぶるぶるぶるっとその妄想を打ち払い、
ここは、今、目の前の菊之助丈に集中です。
良峯少将も、私の好きな錦之助丈ですので、
お二人が共に舞うところに、うっとり。
満開の桜、そこに降りしきる雪、雪太鼓のどーんどーんという低い音。
すべてがしっくり合って、一つの世界を作ります。
常磐津がまたとても良くて、素敵な関の扉ワールドに浸れました。


usakoのわたくしごと>今月は、千秋楽間近になっての観劇でした。
その直前に坂東三津五郎さんの悲報が。
私事乍ら、舞台以外の素顔で一番お目にかかる機会があり、
一番お話させていただいた方でしたので、悲しいというより、
なんだかぽっかり…。

おばあさんになっても、歌舞伎座の客席から
おじいさんになった三津五郎さんの、舞台姿を拝見したかった
それは、夢まぼろしとなってしまいました。 合掌。





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by oomimi_usako | 2015-02-27 11:43 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(2)
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Commented by june_h at 2015-02-28 14:21
三津五郎さんの訃報には、本当に驚きました。
後進を指導する立場の、名のある中堅の役者さん達が、立て続けに亡くなってしまい、30、40代の役者さん達には、踏ん張ってもらいたいところです。
確か、戦争前後も、こうやって立て続けに役者さんが亡くなったことがあったのではないでしょうか。
来世も揃って生まれ変わるつもりなのではないかと、夢想しています。
Commented by oomimi_usako at 2015-02-28 22:37
☆juneさま、
歌舞伎に真正面から精進される役者さんが、またひとりいなくなってしまいましたね。
ずっと心配はしておりましたが、だいぶお元気になって来られたと伺って、復帰を楽しみにしていたときでしたので、
私も本当にびっくりしました。
こうなってくると、福助さんがまた心配です。
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