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2015年9月9日 歌舞伎座にて秀山祭九月大歌舞伎を観劇

(いつものように、歌舞伎のお話ゆえ長文です)

九月の歌舞伎座は秀山祭。
秀山というのは、初代中村吉右衛門丈の雅号で、
先代の偉業をたたえ、その名を冠して十年前から毎年行われている興行です。
今の中村吉右衛門丈は、その養子さんになります。
先代吉右衛門丈の得意としたお役柄か、時代物の重みのある、
いわゆる歌舞伎らしさたっぷりのお芝居がかかります。
役者さんがたも、八月とはまた打って変わって、ベテランが揃ってご出演。

今月は、夜の部の伽羅先代萩の通し狂言を観劇しました。
この演目、通しで見ると、実にわかりやすく、
また、趣向が凝らされているので面白くて、なかなか楽しめる内容です。
八月のデビュー戦(?)に臨んだ方がお有りでしたら、
続けて今月の夜の部をご覧になれば、歌舞伎の楽しさが、
更にお解りになることと思います。
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はじめは、花水橋の場。
足利のお殿様は梅玉丈。
この方、こういうお殿様役が、いつも妙にお似合いです。

次は、竹の間。
私の目指します、坂東玉三郎丈が、政岡でご登場。
かつて玉三郎さんを見始めた頃は、まだ歌右衛門丈もご健在でしたので、
そんな中で、政岡を初めてなさるとなったときは、まだまだだのなんだの
いろいろ言われておいででした。
今となっては、誰もが認める政岡役者になられましたね。
ファンとしては、嬉しい限りです。
同時に登場の八汐という、こわーい奥方様のお役。
いつも立役の方がなさります。
それを歌六丈。
怖さが面白さにもなるこのお役、今までで一番良かったと思うのは仁左衛門丈の時。
でも、歌六丈も、眼力のある役者さんなので、なかなかFunnyでお似合いでした。
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続いて御殿。
先代萩は、お芝居の中に散らばる様々な所作も観処です。
御殿の奥座敷で、お水を運んで手を洗ったり、ご飯を炊いたり。
この、通称飯炊(ままたき)と呼ばれる場面は、政岡が若君のために、
自らご飯を炊くというお芝居。
この世で一番お品の良い、優雅なご飯のお仕度が見られる楽しい場面です。
玉三郎丈の手元がとても美しく綺麗です。

さらに、竹の間とこの場は、子役が見せ場を作るお芝居でもあります。
長い間、きちんと座っていられて、良く通る声できっちり台詞が言える子役が
出演すれば、半分は成功していると言えましょう。
今回の千松役も、小さいながらも好演です。
この幕でも、子役と政岡の掛け合いが見どころ。
随所に見られる政岡の、実子千松に対する母親らしい仕草を、
記憶に留めながらみるのです。
そうすると、次の場面でこの母子に降りかかる悲劇が、
より心にしみることになるでしょう。
千松は、毒入り菓子を食べて主君である若君の命を、身代わりになって救います。
八汐にとどめを刺されて息絶える我が子の様子を眼前に見ながらも、
なお若君を守り続ける政岡の、心意気や迫力が、舞台から伝わります。
その後、ひとり座敷に残された政岡が、亡骸となった千松に対峙するところで、
客席にも涙を誘う、このお芝居のクライマックスが訪れます。
ハンカチでそっと目元をぬぐっておいでのお客様は、大抵“お母さま”方です。
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さて、続く床下の場は、大道具の仕掛けもおもしろく、中村吉右衛門丈の
仁木弾正の出が、またユニーク(独特ということです)です。
役者さんによって、まったく違うものが見られるので、あれこれ見比べるのも、
興味深いところです。
片岡仁左衛門丈、松本幸四郎丈のものが、私は特に好きです。
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そして、対決と刃傷。
やっつけられて倒れる悪者役吉右衛門丈が、退場するところは、
まるで“ジーザスクライストスーパースター”の一場面のようで、
客席からも拍手で見送られています。
また、市川染五郎丈の細川勝元、口跡爽やかで清々しい。
その清々しい雰囲気で、このドロドロした内容の舞台を、
すっぱり綺麗に終わらせることに貢献されていました。

今月も、楽しい観劇が出来ました。



by oomimi_usako | 2015-09-09 16:26 | 歌舞伎やお芝居見物 | Comments(0)
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