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by oomimi_usako
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国立劇場十二月歌舞伎公演 仮名手本忠臣蔵 第三部

国立劇場開場50周年記念、平成28年12月の歌舞伎公演は、三か月かけて上演された通し狂言の最終月でした。
仮名手本忠臣蔵の八段目から十二段目まで。

それを、せっかくなので、ちょうど討ち入りの日(旧暦だとちょっとずれますが)に当たる12月14日に観に行きました。
劇場では、討ち入り当日の観劇記念のお品をいただきました。

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さて、まず八段目、道行旅路の嫁入。
幕開けは一面の松林。
チョンで、後ろに富士山が姿を現して、加古川本蔵夫人戸無瀬と娘の小浪による母娘の道行が始まります。
松の廊下事件の前に、小浪は、大星由良之助の息子である力弥との結婚が決まっていました。
父の加古川本蔵は、塩冶判官と同様に高師直からいわゆるパワハラを受けていた桃井若狭之助の家老でしたが、賄賂を届けて、主人へのそれをうまく回避してしまいます。
で、高師直は塩冶判官を余計に打擲することになりました。
さらに加古川本蔵は、松の廊下で師直に切りかかった塩冶判官を、後ろから抱き留めて制止してしまったのです。
そのため、お取つぶしになった赤穂藩からは、白い目で見られるようになってしまっていました。
それを知ってはいるものの、力弥の人柄を見込んでいた加古川家では、浪人している大星家の息子だって、なんとかお嫁入りさせたいと、この道行になるのです。

味がある魁春丈の戸無瀬と、もうちょっと嫋やかな雰囲気が欲しい児太郎丈。
でも、母(といっても後添えなので義理の仲)と娘の、婚礼を前にした浮き立つ雰囲気が、この先の悲劇を知っている私たちの眼には、とても儚げに映りました。

九段目、山科閑居の場。
山科にある大星家に、ようやく到着した母娘ですが、由良之助夫人に、縁談はなかったことにしてと言われてしまいます。
結局、心配で二人の後を付いてきた加古川本蔵が、自ら力弥に討たれる形で死ぬことで、娘は嫁ぐことが許されます。

由良之助は、先月の吉右衛門丈から梅玉丈へ。
夫人役は、メンバー的にちょっと珍しい笑也さん。
錦之助丈の力弥は、端正な雰囲気が御曹司らしくて素敵。
祝言をしてもらえることになった瞬間の、面々の様子は、静かな感動を誘います。
また、加古川本蔵が、瀕死の時“忠義ゆえに命は捨てないが、子のためになら命は捨てる”と言い放つところに、忠義の討ち入りばかりが際立つこのドラマの中に、もっとも人間らしい別な形のドラマを観ることが出来ると思いました。

この段の幕開けにある、普段は省略されがちな「雪転し」という場面が、今回、上演されています。
花道を、大きな雪まろげ(雪だるまの胴体部分)が、祇園帰りの由良之助とともに賑やかに通過していくのです。
それは、そのあと雪太鼓の音と共に静かにやってくる母娘の様子を、対比によって強調させる効果を感じます。

十段目、天川屋義平内の場。
これが、今回初めて見る段です。
いつも省略されてしまっていますが、今回は、完全上演なので、“真面目”に上演されました。
由良之助の依頼で、赤穂浪士に武器を調達提供した、堺の商人のものがたり。
本当に信頼できるか否かを、赤穂浪士たちにテストされ、無事合格しただけでなく、親子の縁も顧みない忠義心に浪士ら感動します。
義平役は歌六丈。
この方の朗々としたお声は昔から変わらずで、「天川屋義平は男でござる」という名セリフが、心地よく耳に残りました。
自分も武士なら、討ち入りに加わりたいくらいだと残念がる義平に、それならと由良之助があることを提案。
討ち入りの際の志士同士の合言葉を、義平の屋号の「天(あま)」「川(かわ)」とすれば、貴方も参加したことになるでしょうと、したのです。
それで、「あま」といえば「かわ」と答える。
これって、大事な段でしょう??
省いている場合じゃありませんよねえ。


十一段目、高家討ち入りの場。
あちらこちらで、ちゃんちゃんバラバラ。
結局、高師直は捕らえられ、首が討たれて、赤穂浪士らの本懐は遂げられます。
死んだ早野勘平の分も含めて48人として焼香をする柴部屋焼香の場面は、原作の財布の焼香をアレンジしたものだそうです。
花水橋を引き上げていく場面は、全員雁木の揃いの装束。
フォーティエイト揃うと、壮観に見えるのは、江戸時代から変わらないのかもしれない…などと、
余計なことを考えてしまいましたが、綺麗に例えるなら、宝塚のレビューのフィナーレのようで圧巻でした。

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やはり仮名手本忠臣蔵は、物語自体が面白いと思います。
竹田出雲と三好松洛と並木千柳の脚本家の力量が素晴らしいのです。
だから、役者がどうのこうのというのではなくて、脚本に忠実に物語りを追うことで、その面白さを存分に楽しめるというわけ。
役者は、その流れの興を削がないだけの演じ方をすれば、最低限…というよりもむしろ、思う存分観る側を楽しませることが出来るわけなんですね。
だからね、ブツブツ切って上演してばかりでは、あ・か・ん!のです。

最近、歌舞伎座は頼りにならないからね。
大変だとは思いますが、これからも頼みますよ、国立劇場さん。


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by oomimi_usako | 2016-12-29 15:35 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback