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歌舞伎座 六月大歌舞伎 夜の部

今月の歌舞伎座は、新薄雪物語の通し狂言がかかっています。

この狂言は、適役の役者が揃うと、歌舞伎芝居の醍醐味を
すべて兼ね揃えた非常に面白い舞台になると言われていて、
歌舞伎好きなら、当代の役者を揃えての通し狂言を、
一度は見ておきたいと思う、そういうお芝居です。
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今回は、なるほどと納得出来る役者さんのお名前が並びましたので、
拝見しに出掛けました。
昼の部に、序幕清水寺花見の場と、二幕目幸崎邸詮議の場が済んでいて、
夜の部は、三幕目園部邸三人笑の場と、大詰め刀鍛冶正宗内の場の上演です。

寛保元年、竹本座の人形浄瑠璃のために、竹田小出雲、文耕堂、三好松洛、
小川半平の合作で書き下ろされたのち、すぐに歌舞伎へもかけられたのが最初です。
薄雪物語という仮名草子を元にしているので、お話としては、
園部兵衛の息子左衛門と、幸崎伊賀守の娘である薄雪姫の恋物語。
でも、そこにお家失脚の謀反がドロドロ絡み、
命を懸けて子を救う、親の情愛がストーリーを拡げ、
華やかな舞台構えに、一風変わった鳴り物まで耳に新しく、
完成度の高い大舞台が仕上がります。

今回は、遅ればせながらの掛かりどき。
それなら今が観どき、と楽しみにしていました。
歌舞伎座 六月大歌舞伎 夜の部_f0039281_15175250.jpg

三幕目園部邸三人笑の場。
通称“合腹”。
園部兵衛は仁左衛門丈、その奥さま梅の方が魁春丈で、お二人とても良いコンビです。
幸四郎丈は、幸崎伊賀守。
どうお芝居なさるかとても興味がありました。
大音声を上げるところ、切腹していることを隠しているという設定でのお芝居は
やはり役者さんの力量が問われるものだと思いつつ、感心しながら拝見。
この幕ラストの、三人が次々と笑う場面に至っては、
いいものを見せていただいて良い気分になり、
早くも、また是非再演をしていただきたいものだとしみじみ思いました。

脇を固める又五郎丈、権十郎丈も良いお芝居。
若手で加わる薄雪姫の米吉丈は、台詞の途中で身体がヘンにぴくぴく動くのと、
力が入り過ぎるのが気になりますが、かわゆらしくて
一生懸命さにとても好感が持てますので、も少しお上手になったら、
ファンになってしまうかもしれません。

大詰め刀鍛冶正宗内の場は、
前幕合腹での、子のために切腹する二人の父親の情愛をみたあと、
今度は初っ端から、子が親を勘当したという事件から始まります。
悪い子である団九郎が吉右衛門丈。
親の正宗を、歌六丈。
がらりと変わって世話物風なお芝居に。
息の詰まる幕から一転してこういう幕になると、ほっと一息ついて、
また違う気分で続きを楽しめるというもので。
江戸時代のご見物たちも、同じような気持ちで舞台の進行を見つめたでしょうと
タイムスリップしそうな不思議な気持ちになりました。
歌舞伎のお芝居は、いつもみなそうであるはずなのに、
なぜか今回特にそう感じました。
耳慣れない刀を鍛える音が、心地よく響いたあと、
立ち回りは、片腕を無くしたという想定での大捕り物。
鳴り物、刀鍛冶の道具を巧みに使い、注連縄を小道具にして、
吉右衛門さん、見事でした。

親子の深い情愛を描いた、新薄雪物語。
刀を巡る騒動ですが、刀で切れる人の身体と、切れない情愛を絡めているのか、
掘り下げていくと、なかなか味のある深い意味を持つ狂言であるのだろうと思います。
役者を揃えて、再演を期待します。
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usako補足>
そうそう、ちょっと驚いたことに、入場口を入った途端、
昼の部ですでに上演した部分の、あらすじと登場人物相関図を一枚にまとめた
ものを場内で配布していました。
こんなご親切は、長きにわたる観劇人生の中では初めて。
ちょっとびっくりいたしました。

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どうもありがとうございます。
by oomimi_usako | 2015-06-25 15:14 | 歌舞伎やお芝居見物 | Comments(4)
Commented by 2005-1127 at 2015-06-25 17:01
こんにちは♪

usakoさんのような上級者の方のお話を聞いてると、
こちらもとてもお勉強になります💐
歌舞伎には、どのぐらいの頻度で通われてますか?


Commented by june_h at 2015-06-26 11:42
吉右衛門さん、拝見したいものです・・・・・。
今は訳あって、落語も歌舞伎もほとんどの観劇を控えているのでレポ感謝です。吉右衛門さんがお元気なうちに、観劇復活したいと思っています。
Commented by oomimi_usako at 2015-06-27 11:34
☆モンスーンさま、こんにちは。
私などは、ただただ楽しんでいるだけの部類ですので、
観劇歴ばかり長いヒヨッ子…。
少ない知識の中からお披露目するお話で、歌舞伎をおもしろそうだと思って下さる方が出てきてくだされば、うれしいなあと思って、いつも長々書いてしまいます。
モンスーンさま、いつもお目を通して下さって、ありがとうございます!
私の観劇は、最近は年に10回前後でしょうか。
もっと見たいのですけれど~♪♪

Commented by oomimi_usako at 2015-06-27 11:38
☆juneさま、
相変わらずの長い観劇記録、おつきあいくださいまして、
ありがとうございます。
御事情はわかりませんけれど…
どうかお好きな歌舞伎や落語の舞台をご覧になれるときが、
juneさまに早く訪れますように!
そのときまで、しっかりレポさせていただきますっ。
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