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日々のあれこれと、美味しいものの記憶。


by oomimi_usako
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市川染五郎丈が書かれた、″染五郎の超訳的歌舞伎”という御本を読みました。
今回のこの御本は電子書籍で購入。
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語りかけるような調子で書かれた文章は、
歌舞伎を演じている当事者ならではの視点であるためか、
非常に説得力のある内容です。

小さい頃からの出来事や、
歌舞伎以外にご自分が作られた舞台のことや、
これから将来の果てしない野望(?)などを、
書き綴っておられるのですが、
もともとは2011年から13年にかけて発刊された「本の窓」(小学館)の連載を中心にして、
2013年に、書き下ろし部分と現市川猿之助丈との対談を加えて発行されたもの。
ですから、2017年の今、読んでいると、この本の中で夢として語られたことを、
すでに実現なさっているものも、あることに気づきます。

いつも、出来上がった舞台を拝見するばかりを楽しんで居ますが、
そこまでに至る時間・・・制作にかかわる時間だけでなく、演じる役者さんの生い立ちまでをも含めた制作過程を楽しめる、そんな内容の御本。
歌舞伎はあんまりみないけれど、という方にこそ、読んでいただきたいと思う御本でした。








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by oomimi_usako | 2017-09-18 23:46 | 読書

国立劇場の今年の初春歌舞伎公演は、
40年ぶりの上演叶った通し狂言「しらぬい譚(ものがたり)」でした。

観たい、観たいと思いながらも、結局観られず一月は終了。
とても残念に思ったのも束の間で、なんと千秋楽から数日後の二月の初めに、
NHKBSのプレミアムシアターで、舞台録画が放映されました。
これは、ちょっと珍しいことです。

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もちろん録画しました。
ちょうど、時期的にお教室が忙しい時期で、
録画もできた安心から、しばらく寝かして置きましたが、
このたび、ようやく観ることが出来ました。


江戸の終わりから明治にかけての時代、“合巻”と呼ばれる長編小説が庶民に人気でした。
今でいう連載ものみたいな感じですね。

なかでも、最長を記録したのが、
1849年(嘉永2年)から1885年(明治18年)までの長きに渡り刊行された、
「白縫譚(しらぬいものがたり)」全90巻です。
原作は、柳下亭種員(りゅうかていたねかず)。
この人気小説は、河竹黙阿弥の脚色により「志らぬひ譚」として、
もちろん当時の歌舞伎舞台にも上りました。
こういう経緯は、いつの世も変わらないのですねえ。

舞台は人気となり、歌舞伎だけでなく、講談や浮世絵、のちには映画なども制作されたそうです。
国立劇場では、1977年(昭和52年)に「志らぬひ譚」として76年ぶりの復活上演をしているようですが、今回は尾上菊五郎丈を中心に、原作だけでなく今までの舞台化作品や講談などからもヒントを得て、脚本を新たに起こして製作されたということでした。


ストーリーは、江戸時代初期の筑前国黒田家のお家騒動を、主な題材にしていて、
黒田家は菊地家として登場します。
滅ぼした豊後国大友家の残党が、菊地家をお家存亡の危機に陥れようとするところを、
菊地家の執権である鳥山豊後之助が、智略を尽くして阻止していくというお話。
妖術を使う大蜘蛛や、
復讐に燃える大友家の若菜姫の怪しい力、
暗闇で目を光らせる大化け猫。
筋交いでの宙乗りやら、
屋体崩しやら、
大立ち回りなどなど、黙阿弥得意のスペクタクルフル(?)な展開は、
TVで観ていても楽しいものでした。


尾上菊五郎丈、菊之助丈、時蔵丈、松緑丈、團蔵丈など役者も勢揃い。
三時間に及ぶ上演でも、きっとお客さまは目の前の舞台に引き込まれて行ったことでしょう。
こいつぁ春から縁起がよいわぇ…と、少々遅ればせながらの、隼人町の初芝居を楽しみました。


途中演出で、通人の亀蔵丈が、“ピコ太郎”の扮装をして登場するところがあります。
これも、黙阿弥お得意の演出で、その時流行るものを自由に取り入れるというお約束の場面。
録画では、普通に面白かったのですが、どうやら千数楽も間近い1月23日には、
ピコ太郎氏ご本人がサプライズで舞台に登場されたらしく、
当日観劇のお客さまには良いお年玉になったことでしょう。
固いイメージのある国立劇場ですが、随分思い切ったものだとちょっと感心しました。


国立劇場開場50周年記念公演は、今月三月公演の千秋楽(27日)と共に終了します。
これから先の50年後、そしてまたそのさらに先の50年後、
歌舞伎は一体どんな風になっているのでしょう。
日本の代表的な伝統芸能として、良い意味で変わり、良い意味で変わらず、
賑々しく続いていってほしいと、そんな風に思っています。


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by oomimi_usako | 2017-03-24 22:09 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(4)

国立劇場開場50周年記念、平成28年12月の歌舞伎公演は、三か月かけて上演された通し狂言の最終月でした。
仮名手本忠臣蔵の八段目から十二段目まで。

それを、せっかくなので、ちょうど討ち入りの日(旧暦だとちょっとずれますが)に当たる12月14日に観に行きました。
劇場では、討ち入り当日の観劇記念のお品をいただきました。

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さて、まず八段目、道行旅路の嫁入。
幕開けは一面の松林。
チョンで、後ろに富士山が姿を現して、加古川本蔵夫人戸無瀬と娘の小浪による母娘の道行が始まります。
松の廊下事件の前に、小浪は、大星由良之助の息子である力弥との結婚が決まっていました。
父の加古川本蔵は、塩冶判官と同様に高師直からいわゆるパワハラを受けていた桃井若狭之助の家老でしたが、賄賂を届けて、主人へのそれをうまく回避してしまいます。
で、高師直は塩冶判官を余計に打擲することになりました。
さらに加古川本蔵は、松の廊下で師直に切りかかった塩冶判官を、後ろから抱き留めて制止してしまったのです。
そのため、お取つぶしになった赤穂藩からは、白い目で見られるようになってしまっていました。
それを知ってはいるものの、力弥の人柄を見込んでいた加古川家では、浪人している大星家の息子だって、なんとかお嫁入りさせたいと、この道行になるのです。

味がある魁春丈の戸無瀬と、もうちょっと嫋やかな雰囲気が欲しい児太郎丈。
でも、母(といっても後添えなので義理の仲)と娘の、婚礼を前にした浮き立つ雰囲気が、この先の悲劇を知っている私たちの眼には、とても儚げに映りました。

九段目、山科閑居の場。
山科にある大星家に、ようやく到着した母娘ですが、由良之助夫人に、縁談はなかったことにしてと言われてしまいます。
結局、心配で二人の後を付いてきた加古川本蔵が、自ら力弥に討たれる形で死ぬことで、娘は嫁ぐことが許されます。

由良之助は、先月の吉右衛門丈から梅玉丈へ。
夫人役は、メンバー的にちょっと珍しい笑也さん。
錦之助丈の力弥は、端正な雰囲気が御曹司らしくて素敵。
祝言をしてもらえることになった瞬間の、面々の様子は、静かな感動を誘います。
また、加古川本蔵が、瀕死の時“忠義ゆえに命は捨てないが、子のためになら命は捨てる”と言い放つところに、忠義の討ち入りばかりが際立つこのドラマの中に、もっとも人間らしい別な形のドラマを観ることが出来ると思いました。

この段の幕開けにある、普段は省略されがちな「雪転し」という場面が、今回、上演されています。
花道を、大きな雪まろげ(雪だるまの胴体部分)が、祇園帰りの由良之助とともに賑やかに通過していくのです。
それは、そのあと雪太鼓の音と共に静かにやってくる母娘の様子を、対比によって強調させる効果を感じます。

十段目、天川屋義平内の場。
これが、今回初めて見る段です。
いつも省略されてしまっていますが、今回は、完全上演なので、“真面目”に上演されました。
由良之助の依頼で、赤穂浪士に武器を調達提供した、堺の商人のものがたり。
本当に信頼できるか否かを、赤穂浪士たちにテストされ、無事合格しただけでなく、親子の縁も顧みない忠義心に浪士ら感動します。
義平役は歌六丈。
この方の朗々としたお声は昔から変わらずで、「天川屋義平は男でござる」という名セリフが、心地よく耳に残りました。
自分も武士なら、討ち入りに加わりたいくらいだと残念がる義平に、それならと由良之助があることを提案。
討ち入りの際の志士同士の合言葉を、義平の屋号の「天(あま)」「川(かわ)」とすれば、貴方も参加したことになるでしょうと、したのです。
それで、「あま」といえば「かわ」と答える。
これって、大事な段でしょう??
省いている場合じゃありませんよねえ。


十一段目、高家討ち入りの場。
あちらこちらで、ちゃんちゃんバラバラ。
結局、高師直は捕らえられ、首が討たれて、赤穂浪士らの本懐は遂げられます。
死んだ早野勘平の分も含めて48人として焼香をする柴部屋焼香の場面は、原作の財布の焼香をアレンジしたものだそうです。
花水橋を引き上げていく場面は、全員雁木の揃いの装束。
フォーティエイト揃うと、壮観に見えるのは、江戸時代から変わらないのかもしれない…などと、
余計なことを考えてしまいましたが、綺麗に例えるなら、宝塚のレビューのフィナーレのようで圧巻でした。

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やはり仮名手本忠臣蔵は、物語自体が面白いと思います。
竹田出雲と三好松洛と並木千柳の脚本家の力量が素晴らしいのです。
だから、役者がどうのこうのというのではなくて、脚本に忠実に物語りを追うことで、その面白さを存分に楽しめるというわけ。
役者は、その流れの興を削がないだけの演じ方をすれば、最低限…というよりもむしろ、思う存分観る側を楽しませることが出来るわけなんですね。
だからね、ブツブツ切って上演してばかりでは、あ・か・ん!のです。

最近、歌舞伎座は頼りにならないからね。
大変だとは思いますが、これからも頼みますよ、国立劇場さん。


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by oomimi_usako | 2016-12-29 15:35 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback

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秀山というのは、初代中村吉右衛門の俳名です。
亡くなったのは、昭和29年なので、もちろん私は舞台を拝見したことがありませんが、
是非見てみたかったと思う役者さんのうちのひとりです。
当たり役も多く、歌舞伎界に残した功績は、役者・指導者・制作者…様々な面で、数多く今に伝わります。
秀山祭は、2006年9月に生誕120年を記念して、行われたのが初めです。
以来毎年9月、現吉右衛門さんはじめ、ゆかりあるお家の役者さん方が、見ごたえあるお芝居で長月の舞台見物を楽しませてくれています。

現在の中村吉右衛門さんは、母方の祖父であったこの初代の養子になり、二代目となりました。
なので、お兄さんである松本幸四郎さんとは、名字が違うわけですね。
ちなみに、初代中村吉右衛門の弟にあたるのが、先代中村勘三郎さん。
今の中村勘九郎さんのお父様ではなくて、おじいちゃまのほうです。
歌舞伎界は、養子縁組などが盛んにおこなわれていますので、あっちもこっちも親戚みたいなものです。

さて、その秀山祭、今年は、夜の部を選びました。
久し振りに、“妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)”の“吉野川(山の段)”が見られるのと、
これまた久し振りに玉三郎さまの綺麗なお姿がたくさん見られるという理由での選択です。

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まずひと幕目は、いきなり2時間がかりで“吉野川”。
近松半二や三好松洛らの合作の“妹背山婦女庭訓”という五段十二場の人形浄瑠璃の大作は、すぐ歌舞伎でも上演されるようになりました。

舞台中央に吉野川を作り、瀧車という昔からのやり方で、水が流れているように見せる舞台装置を配置します。
川は流れて客席に注ぎますので、客席は吉野川。
お客様は、さながら川面の泡ぶくという感じでしょうか。(私は二階桟敷より川面を見下ろしておりました)
川をはさんで、上手が紀伊国、下手が大和国という設定ゆえ、花道も上手下手両方に設置して、舞台も客席もひっくるめて
大きな空間でお芝居が進行します。

菊之助丈のお姫様姿の可愛いこと。
すっとするような美しさです。
彼女の恋のお相手が、染五郎丈で、これまたススーッとするような美しい若殿さまぶり。
腰元役の梅枝、萬太郎丈もかわゆらしくて、みていて楽しくなってしまいます。
14年ぶりの大判事役の吉右衛門丈、初代松本白鸚すなわち実父の型で今回は演じられたそうです。
そして、玉さまは、美しさに母の強さが加わって、鬼気迫るお姿も拝見出来ました。
こういうお役でも、魅力を存分に発揮されていることが、年齢の重なりを感じさせ、とても印象に残りました。

本花道、仮花道にそれぞれ立っての、吉右衛門丈、玉三郎さまの掛け合いは、仲の悪いお家同士のいがみ合い。
でも、やがて解きほどかれて変化していくところが、二人の大役者の腕の見せ所なのです。
舞台に渡ってからは、吉右衛門丈扮する、息子を切腹させなければならない父と、
玉三郎さま扮する娘の首を切らねばならない母のそれぞれの気持ちを、吉野川をはさんで交互に見せていきますが、
私としては、後者母娘のやり取りの方に、より心に訴えるものがありました。
お芝居の中では、息子と娘はどこまでも儚げで、また父と母はどこまでも厳しく、しかし心優しくなければなりません。
今回は、今ならではの役者を揃えて、今だからこその見ごたえのある、幕になったと思いました。

いま、この時、このお芝居を観られて良かったとおもうことは、なかなか多くはないのですが、
良いものを見せて貰ったと思えるひと幕でした。

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ふた幕目は、らくだ、というお芝居。
実は、こちらも先月見た新作芝居同様に、落語から歌舞伎に脚本化されたお芝居です。
昭和三年三月本郷座初演で、ベースは三代目柳家小さんの「らくだ」。
ちなみに、作者岡鬼太郎氏は、洋画家岡鹿之助氏のお父さまです。
松緑丈は、世話物をするのには姿は良いのですが、台詞の抑揚のつけ方にちょっと癖があって、聞きづらいのがいつも気になります。
歌六さん、お役の雰囲気が珍しい感じで、面白かった。
だんだん酔っぱらっていく染五郎丈がウマイ!
先月の新作よりもより、ドタバタして面白くさせるという感じなので、笑て笑っておしまいになります。
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三幕目は、元禄花見踊。
これは、玉三郎さまを中心に、若手勢ぞろいの舞踊です。
元禄時代のお花見の様子を、もうただただ綺麗に華やかに表した、まるで宝塚レビューのようなひと幕でした。
私は、若手の皆様のお顔暗記(?)にその時間を費やしてしまい、肝心の玉さまの踊りに五割ほどしか集中できなかったのが、
少々残念でありました。

今回も、長文、最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました!



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by oomimi_usako | 2016-09-06 22:24 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(0)
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歌舞伎座の六月大歌舞伎は、義経千本桜を三部制で上演。
珍しくそれぞれの部に、サブタイトルも付けちゃいました!
第一部が“碇知盛(いかりとももり)”、第二部が“いがみの権太”、
第三部が“狐忠信”。
これらすべて登場人物の愛称で、それぞれがその部分のストーリーの
メインキャストという意味で名付けたそうです。
私は、第二部を観に行きました。
長編の時代物であるこのお芝居の、ちょうど中間部“木の実(あるいは
椎の木とも呼ばれる)”“小金吾討ち死”そしてこれを見ると柿の葉寿司が
食べたくなる“すし屋”という幕です。

お話のあらすじは、もうみなさん周知のことなので、ここでは割愛させて
いただき、いつものようにミーハーな目で見たあれこれを。
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まずはやはり、いがみの権太を演じた松本幸四郎丈。
悪人の顔、子を想う親の顔、そしてある意味で親に孝行する子供の顔。
それぞれの場面で、別人と言っても良いくらいのキャラクターの違いを
見せ乍ら、全場面に渡って扇の要となっておいででした。
第二部を締めていたのは、やはりこの方でした。

それから、大活躍だったのが尾上松也丈。
TV番組にもお顔を出されているようですが、ここのところ舞台でも
奮闘されているお姿を良く見るようになりました。
端正なお顔立ちで惹きつけた多くのファンを、更に演技を磨いて
虜にして欲しいものです。

お里が、市川猿之助丈。
襲名以来初めて拝見、というより、そもそもこの方の舞台は、
お若い頃のを数回しか見たことがありません。
丸顔が可愛らしく、とても良いお里。
この方、立女形というより、女形一本で行ったほうが良いんじゃない
かしら?という感じ。
でも、さすが当代の人気役者だけあって、昼下がりの長丁場である
“すし屋”の段で、ご見物をぐいぐいひっぱって、
惹きつけていらっしゃいました。
まっ、お里がキツネチックに動くのが、若干気になりましたが。

そして、終盤首実検の場面には、梶原景時で、坂東彦三郎丈がご登場。
少しだけの出演ですが、こういう役者さんが出ると、
座がますます締まります。
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さてさて・・・。
三人の人物をそれぞれに描き出す、という趣向(?)で、
三部に分けられたこのたびの義経千本桜。
ストーリーを把握している人間からみれば、
ブツブツ切られて却ってわからんっ…
と、言いたいところをぐっと我慢して。
ビギナーの皆々さまが、この三人の人物を取っ掛かりにして、
義経千本桜をどのように受け止められたか、じっくり伺ってみたい気が
いたします。




                         ‐
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by oomimi_usako | 2016-06-25 08:26 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(4)
今月は、昼の部に出掛けました。
三年ぶりの再演叶った、幸四郎丈の不知火検校を観たかったので。
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その前に、まず一幕目。
舞踊の松寿操り三番叟(まつのことぶきあやつりさんばそう)。
尾上松也くんが後見役で、あやつり人形の染五郎丈を糸で操り、
三番叟を躍らせます。
もちろん操り人形であるからには、糸を操られて動くように
踊らなくてはなりません。
後見とのタイミングの取り方も難しいはずですが、
気持ちよい程絶妙なコンビネーション。
途中、絡んだ糸を直す振りまであってそれがまた面白く、
あっという間のひと幕でした。
染五郎丈の人形振りは、まだうら若き美少年(?)の頃になさった“京人形”というお芝居が、とても印象に残っていますが、アクロバティックともいえるこの三番叟では、壮年期の染五郎丈の演技がとても印象に残りました。
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二幕目が、今回のメイン、不知火検校(しらぬいけんぎょう)。
このお芝居は、三年ぶりの上演。
もともとは、宇野信夫氏が昭和35年に十七代目中村勘三郎のために書き下ろしたものです。
親の間違い(殺人)の因果応報か、生まれた時から盲目の富之助という青年が、数々の悪事を働きながら、富と力を手に入れていくのですが、やがてその悪事が露見して、お縄にかかるという話。
暗転で降りてくる幕も、おどろおどろしい不知火が書かれているという怖い演出がしてあります。
人間の悪の心が、次々と舞台の上で展開していき、次から次へと良くこんな悪いことが考え出せるものだとあきれるほどです。

このお芝居は、歌舞伎のように見えますが、実は、歌舞伎というより現代劇に近いものではないかと感じました。
悪の華が咲くほどに展開する歌舞伎芝居が、鶴屋南北や河竹黙阿弥らによって書かれ、今日に至るまで観客を魅了してきました。
不思議なことに、それらのお芝居のエンディングには、
救いがあるように思います。
主人公に訪れる結末がたとえ最悪のものであったとしても、引かれていく幕に拍手をしながら、なにか清々しいものを感じられるのです。
ところが、この作品には、それがありません。
徹底的に打ちのめされた悪だけが残り、後味の悪いことこの上なく、“只今、20分の幕あいです…”という劇場内のアナウンスがいつも通りに流れても、なんだかスッキリしない、そういうお芝居なのでした。
まあ、それがこの作品の良さでもあるのですけれどね。

幸四郎丈さすがの迫力。
このお芝居では、若手の皆様が多数ご活躍でした。
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というわけで、三幕目は、思いっきり御口直し。
身替座禅で、面白おかしく締めくくります。
たぶん今の役者さんの中では、この組み合わせがいちばん面白いのではないかと思われる、仁左衛門丈の右京に、左団次丈の奥方玉の井。
気分もすっきり元に戻り、そして今月も足取り軽く、歌舞伎座をあとにしたのでした。

usakoのおやつ>今回も、お気に入りの席での観劇。
そして、幕間のおやつはこちら。
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以前にも箱買いしたときに、ご紹介したことがありますが、
熊本名物黒糖ドーナツ棒。
地元では有名なフジバンビ社製の、歌舞伎座限定仕様のドーナツ棒です。
第24回全国菓子大博覧会九州in熊本では、リッチモンドクラブ賞を、
また、第25回全国菓子大博覧会では、名誉総裁賞を、
それぞれ受賞したそうですが、納得のとても美味しいお菓子です。
軽食の売店にありますので、ご自身のおやつに、
あるいは、ちょっとした歌舞伎土産に、是非どうぞ。
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by oomimi_usako | 2016-04-22 22:28 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(0)
今月の歌舞伎座は、三月大歌舞伎。
中村芝雀丈の、五代目中村雀右衛門襲名披露公演でした。
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それならば、やはり口上を観たいので、夜の部を観に出掛けました。

一幕目は、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)より、
“角力場”。
このお芝居は、もともと世話物人形浄瑠璃として、人気の三大作家である
竹田出雲、三好松洛、並木千柳の合作として書かれました。
人形浄瑠璃での評判はさほどでもなかったようですが、
その後歌舞伎の上方狂言として上演されて人気が出たものです。
お芝居自体は、九段目まである長いもので、当初(天保年間)は通し上演
されていたそうですが、その後は、二段目にあたる“角力場”と他いくつかの
場面を取り出して上演されてきました。

近年になって、国立劇場で通し狂言として復活されたことがあり、
当時は話題になったそうですが、それは昭和43年9月のこと。
内容的にはなかなか面白い狂言だと思うので、是非とも、
通し狂言としてみられる機会を作っていただきたいなあと思いました。
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さて、そのひと幕目、今回は、菊之助が二役。
相撲フリークで、贔屓の相撲取りがある町屋の若旦那ハンと、
真面目で一途な若手関取を演じ分けます。
これが見事。
育ちの良いボンボンのちょっと喜劇的な表現も巧く、また、
関取の若々しさを、張りのあるお顔立ちと伸びやかなお声で素敵に表現して、
上々吉。
それを受ける立場の風格と貫禄のある大関力士の役は、橋之助丈。
こちらもまた、重みがでていてよかったです。
このお二人の組み合わせ、なかなか見ごたえがありました。
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ふた幕目は、待ってましたの襲名の口上。
内輪話などもちらりと聴けて楽しめます。
舞台に居並ぶ、総勢19名の、今をときめく幹部級歌舞伎役者さんたち
お一人お一人に、そして、これから新しく中村雀右衛門としての道を
歩きはじめる芝雀丈に、客席からは温かい拍手と、たくさんの掛け声が、
贈られていました。
*出演俳優(ご参考)
 坂田藤十郎、片岡仁左衛門、片岡秀太郎、中村歌六、中村扇雀、
中村又五郎、中村魁春(かいしゅん)、中村梅玉、尾上菊五郎、
中村吉右衛門、片岡我當、中村東蔵、中村鴈治郎、中村橋之助、
中村時蔵、尾上松緑、大谷友右衛門、松本幸四郎。(ご挨拶順)
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三幕目は、祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)より、“金閣寺”。
こちらもまた、宝暦年間に五段ものとして初演された人形浄瑠璃の中の、
四段目だけが、今日“金閣寺”として上演されています。
よく言われていることなのですが、“もっとも歌舞伎らしい演目”であり、
場面も、筋立ても、役者も、そして演出方法までもが、まさに、歌舞伎。
初めて歌舞伎をご覧になる方には、是非選んで頂きたいもののひとつです。
定式幕があくと、京都金閣寺が舞台中央に設えられています。
春爛漫で、金閣寺の屋根の高さほどの桜木が、満開の花盛り。
その下で、お芝居が展開していきます。
雀右衛門丈演じるのは、桜色の打掛に身を包んだ、雪姫。
可愛らしく、健気。
でも、いざという時には、賢く勇気のある行動をとる歌舞伎の
代表的な“三姫”のうちのひとりです。
私は、玉三郎さまの雪姫が好きで、見る機会も多く、一番の見せ場である
“爪先鼠”の人形振りで演じられるバージョンもみましたが、
当代雀右衛門丈の雪姫もまた、小さいながらも大奮闘する様子が
可愛らしくて好きです。
お芝居全体としても、季節がマッチしていて、少し早めの桜吹雪が
楽しめる上に、役者も揃っていて、とても見ごたえのあるひと幕でした。
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最後の四幕目までの幕間は、10分間。
その間に、幕の裏、舞台上は大騒ぎ。
ブォンブォンと凄い音で掃除機(!?)を掛けて、降らすにいだけ降らした
桜の花びらのお掃除です。
一階最前列前の通路には、こぼれた花びらがたくさん落ちていて、観劇記念
にお持ち帰りになる方も見られました。

そして、関三奴。
長唄に乗せて、毛槍を操る奴、三人。
鴈治郎丈と勘九郎丈と松緑丈。
威勢の良い、中堅三人がそれぞれの個性が溢れる踊りをみせてくれました。

夜の部全体的に、温かみを感じられる良い内容に感じられたのは、
たぶん五代目雀右衛門さんのお人柄が反映されたからではないかと、
そんな風に思います。
小さい御身体で、嫋やかに可愛らしく芝雀という女形を演じてこられた方が、
これから大名跡である雀右衛門をどう務めて行かれるか、これから先が
とてもとても楽しみだと思いました。

usako補足>今回は、歌舞伎座でばったり、元の会社の先輩にお会い
しました。お席は少し離れていましたが、幕間はご一緒にお食事などしながら、
歌舞伎のお話(先輩も歌舞伎好き)に花が咲きました。
私は、たいていいつも一人でじっくり観劇しているのですが、
幕間の歌舞伎談義も楽しいものです。
終演後も名残惜しく、少しお茶などご一緒していろいろお話いたしまして、
これからは、是非時折ご一緒いたしましょうとお約束して、
花冷えの夜風に余韻の残る木挽町を、あとにいたしました。
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by oomimi_usako | 2016-03-27 15:35 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(6)
今月の歌舞伎座では、昼の部の通し狂言新書太閤記を観ました。

昭和14年(1939)12月の歌舞伎座が、初演のお芝居です。
原作は吉川英治氏で、その年のお正月から新聞紙上に連載されて
大人気となったものを、先代(六代目)菊五郎丈が、連載中から
歌舞伎として作り上げました。
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いままで何度も上演されてはいるものの、七代目の思い入れを
たっぷり詰め込んで、今回の上演となったようです。
大筋としては、良く知られた秀吉の出世物語なので、あたらめて
あらすじを追う必要はありません。
その分、セリフをよく聞き、役者さん方の表情や仕草を注視して、
お芝居そのものを楽しむことが出来ました。
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台詞のテンポもちょうど良くて、話の展開の早いこと早いこと!
でも、それらに決して無理はなく、むしろ快く舞台にのめり込めました。
その結果、もしかしたら、今の歌舞伎が見直すべき点は、ただひとつ。
テンポだけなのかもしれない…などとも思えてしまいました。

さて。
舞台上では、七代目菊五郎丈が“最初から太閤殿下”の雰囲気を
醸し出している、ということだけには、片目をつぶる必要があります。
秀吉を描いた物語は数々あり、今日に至るまでに様々な角度から様々な
秀吉像が描かれてきました。
秀吉、といったときに、教科書の絵ではなくて、ある役者さんの
お顔が浮かんでくるという方も多いことでしょう。
でも、すべては後の世の人の、想像にしかすぎません。
菊五郎丈は、いままでなんとなく作りあげられてきたイメージとは、
凡そかけ離れた秀吉を演じていましたが、この通し狂言をじっくり
観ているうちに、なんだかそれが新しい秀吉のイメージとして、
塗り替えられて定着してしまったような気がしています。

また、今回は、あれこれ工夫をされながら、足したり削ったり、
たぶんお稽古をなさりながらも舞台をまとめてこられたのでしょう。
最初に出来たちらしには、“庄内河畔より、中国大返しの場まで”と
記されていて、役名をみると浅井長政が登場するはずでしたが、
初日にはそれらが変更されていました。
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すでに上演を重ねた演目も、磨き、練り上げることにより、より一層
見ごたえのある面白いものになって行くのだと、実感できる舞台でした。
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usako補足その1>錦之助丈、御病気のため休演。心配です。

usako補足その2>歌舞伎座と言ったら人形焼。
毎回飽かずお土産に買い、それとは別に、幕間のおやつにと、
焼き立てを買います。
ハフハフしながら食すのがまた、かくべつかくべつ。
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by oomimi_usako | 2016-02-26 17:47 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(2)
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今年の観劇初めに出掛けてまいりました。
歌舞伎座初春大歌舞伎昼の部。
一年間通してみると、やはりお正月の歌舞伎座がいちばん好きです。
ご見物のみなさまのお召し物も、ひときわ美しく、
それを拝見しているだけでも、楽しい気持ちになります。
客席に入ると、真っ白に雪を頂いた霊峰富士の緞帳が目前に。
そして、幕が上がり、今年最初で最初(?!)の幕が始まりました。

ひと幕目は、廓三番叟。
黒地に鶴の舞う、豪華な打掛の掛けられた舞台。
奥に、雪吊りの松の書割、襖には、竹梅の描かれたところへ、
孝太郎丈の千歳大夫と、種太郎丈の新造松ヶ枝が、朱の酒器を持って登場します。
おめでたさ満載のひと幕にうっとりしました。

ふた幕目は、義経千本桜から鳥居前のひと幕。
京の伏見稲荷の鳥居前です。
紅白の梅の吊りものの下に、門之助丈の義経の白いお衣裳、
児太郎丈の静御前の赤のお衣裳、逸見の陣羽織、忠信のお衣裳なども含めて、
黒、金糸の刺繍が施された着物のお役の方が多く、華やかさを感じられます。
歌舞伎は、その様式美の中に、衣装の美しさが占める割合も大きく、
それが、見ていて楽しいと思う理由の一つにもなっています。
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三幕目。
梶原平三誉石切。
鶴ケ岡八幡社頭の場。
幕が上がると、八幡様のお社が正面に見えています。
この前幕が、伏見稲荷の前でしたので、まるで歌舞伎座で、
あちらこちらの初詣をさせてもらっているかのようです。

この幕も紅白の梅の吊りもの。
舞台上にも紅梅白梅が配置され、季節感がマッチしているので、
なんとなく観ていてもストレスフリーな印象。
最近特に観る機会が多くなりました、吉右衛門丈のこの梶原景時。
舞台上には、歌六丈、又五郎丈、歌昇丈、種之助丈と、
兄弟親子が揃って、さながら播磨屋スペシャルです。
六郎大夫と娘梢のやり取りの間、静かに淡々と刀の準備をする景時の様子が、
とても美しく、こういうお役は、吉右衛門丈にぴったりだと思いました。
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四幕目。
松羽目ものの舞踊、茨木。
初春から坂東玉三郎丈を拝見出来て、とてもうれしいこと。
夜の部の美しい夕霧と、どちらにするか悩みましたが、
敢えて老婆から茨木童子に変身する玉さまを選びました。

お囃子に十三世田中傳左衛門が出ておられました。
ちょうどこの方が、七世田中源助から今の名に襲名された舞台が、
やはり玉さまの茨木の、小鼓でした。

この幕も、親子出演があり、松緑丈と左近君。
今回の松緑丈、拝見していて、まるで人形浄瑠璃の頭のようだと思いました。
とても見映えがして品があります。
この方は、こういう姿が似合うのだなと。
この線でご活躍なされば良いのにと、思いました。

気配を消して、玉さま花道よりご登場。
ただ綺麗なだけではない玉さま。
様々なお役をなさるとき、それをどう演じられるのだろうかと、
想像する楽しみもある役者さんです。
このお姿を見られただけで、この日、観に来た甲斐があったと思うのでした。
後シテの茨木童子の玉さまも、圧巻でした。
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usako補足>
来月は、夜の部の、菊之助丈の揚巻にこころ惹かれましたが、
でも、夜の観劇は寒いからねえ。
ということで、昼の部、吉川英治の新書太閤記を通し狂言でみてまいります。
秀吉を菊五郎、へ~。
信長が梅玉、ほぅ~。
光秀が吉右衛門、ふ~ん。
・・・観劇後の感想や如何に!!!
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by oomimi_usako | 2016-01-23 16:12 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(6)
(観劇記録は、またもや長文。平にご容赦くださいまし。)

今月は、二世尾上松緑丈の二十七回忌追善の狂言が、昼夜共に含まれています。
二世尾上松緑丈とは、現在の四世松緑さんのおじいちゃまに当たる方で、
いまの市川海老蔵さんのおじいちゃまである十一代目市川團十郎と、
いまの市川染五郎さんのおじいちゃまである初代松本白鸚とは、三人の兄弟。
体格が良く、お声も太く大きく、勇壮なお役が似合う方でした。
いまの松緑丈とは、ちょっと違うタイプです。
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演目のラインナップは、
一、音羽嶽だんまり(おとわがたけだんまり)
二、歌舞伎十八番 矢の根(やのね)
三、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
四、人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)
となっていて、このうち、二と四が、追善狂言になっています。

まず、音羽嶽だんまり。
綺麗な若手役者さんたちを揃えての、ビジュアル重視の演目です。
型やお衣裳に決まりがありますが、これは四の五の言わずに、うっとり眺めれば良いもの。
近頃私が、たいそう贔屓に思う尾上右近ちゃんがご登場なので、うっとり楽しませていただきました。

次は、矢の根。
歌舞伎十八番のうちの一つで、荒事と呼ばれるその典型です。
曽我五郎時致(そがのごろうときむね)が主人公の、いわゆる曽我物と言われるものの一つ。
通常は、お正月狂言として利用されるものですので、紅白梅、宝船の絵、初夢など初春狂言の材料が並びます。
今回は、二世松緑丈が得意とした荒事のお芝居ということで、季節外れもまたよし。
ラストシーンなどは、お大根を振り上げ、御馬にのって花道を退場するちょっと面白い演目です。

曽我五郎時致は四世松緑丈が演じます。
お孫さんだからといって、おじいちゃまが得意な役がぴったりハマるというわけでもありませんが、大御所のみなさまご出演で格調の高いなか、松緑丈、ご自分なりの曽我の五郎で、頑張っておられました。
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三番目は、一條大蔵譚。
お話は、“平家にあらずんば人にあらず”の時代。
かつて尾張の辺りで裏切りによって殺された源義朝の妻であった、常盤御前を娶ったのが一條大蔵卿。
この方、側近も含めて周囲の人々には、“のっそり”と言われています。
のっそりとは、当時阿呆者のことをそう呼ばわっていました。
ところが、それは周囲を欺く仮の姿。
本性は、賢い賢いお方であったことが判明する経緯を、お芝居に仕立ています。
一條大蔵卿を片岡仁左衛門丈。
阿呆はフリだけなので、あとでキリリっとなるその対照が、仁左衛門さまならではで、ちょっと楽しくなります。
なんだか私には、大河ドラマ篤姫で、堺雅人くん演じた徳川家定公とダブって見えました。
菊之助丈、孝太郎丈も、きっちりお芝居なさるので、舞台がとても締まって見えます。
常盤御前は時蔵丈で、ただ儚げなだけではない力強さを感じました。
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最後は、人情噺文七元結。
これは、世話物と呼ばれるお芝居。
江戸の町人の暮らしの中に展開されるお話を、描いたものです。
時代ものとは全く違うこちらの主人公左官の長兵衛も、実は、二世松緑丈が得意としたお役でした。
明治35年、当時の名人噺家三遊亭円朝の人情噺を劇化して、歌舞伎座で上演したのが最初です。
初演したのが、五世尾上菊五郎だったので、以来音羽屋で受け継いでいるのですが、五世の子、六世尾上菊五郎と、師弟関係にあった二世松緑丈も当然そのお役をなさいました。

坂東玉三郎さまは、角海老という吉原の妓楼の女将役。
姫も良いけれど、こういう役もとてもお似合い。
音羽屋なので菊五郎丈が長兵衛役で、台詞、雰囲気何をとっても、これまた良かったですねえ。
そのお内儀を時蔵丈ですが、この方も、ぴったりはまっていて、前の演目の常盤御前との180度の変わりようが流石だと思いました。
そして尾上右近ちゃんは、長兵衛の、親孝行娘のお久で登場。
白塗りでなくても綺麗だし、お芝居も巧いのです。
尾上右近ちゃんのお父さまは、いま清元で謡っておられる七世清元延寿大夫さんで、この方もお若い頃、歌舞伎役者として舞台に立っていらしたことがあって、そのころのご様子とそっくり。
拝見していると、なんだか嬉しくなります、私、延寿大夫さんもファンなので。
なんといっても、六世尾上菊五郎の曾孫さんですから、DNAのなせる業は大きいようです。
お久が長兵衛父さんに更生を願うシーンでの“おとっつあん・・・”という優しい呼び掛けに、心動かされるお客さまが多いようで、ハンカチで涙をぬぐう様子が、客席のあちこちにみえました。
(二階桟敷席からの観劇なので、お客さまの動向が良く見えて興味深いのです)

今月も楽しい観劇が出来ました。
11月は御休みして、12月悩み中です。
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by oomimi_usako | 2015-10-11 22:40 | 歌舞伎やお芝居見物 | Trackback | Comments(4)